2008年 05月 14日
コラボレーション 「!」 (3) |
そして翌日。
前日ほどの雨ではないにしても、まだ時折小雨のパラつくどんよりした空を見上げながら
私は殆ど不機嫌であった。
もう一度〈風草〉に行くべきか、それとももうやめるのか・・・
性懲りも無くまたそんなことを考えている自分に、さすがにうんざりしていたのだ。
その日は他に用事があるわけでもなかったので、行けないわけではない。
しかし、尾崎さんは初日に撮った写真で一応OKをだしてくださっていたので
どうしても行って撮りなおさなくてはならないわけでもない。
行ったからといって、前日よりマシな写真が撮れるかどうかもわからない。
行くのも行かないのも、私の気持ち次第だった。
「あら・・・・・・・おはようございます」
三度目の訪問を半ば呆れ顔に迎えてくださったオーナーに
「なかなかOKが出なくて・・・何度もすみません」
と、少しだけ嘘をついたのが後ろめたくて、そそくさと撮影の準備を始める。
位置を決め、三脚を立ててカメラを真っ直ぐにセット。
前日みんなで作った環境を思い出しながら、雨戸を半分閉めたり
白い縁側を黒のシートで覆ったり・・・
他に訪れる人も無くしずかな空間で、思えば初めてたった一人で
私はこの作品と向き合った。
完璧に整えられたシチュエーション
正しい位置に据えたカメラ
設定を何度も確かめてから、静かにシャッターを切った。
ここまで整ってしまえば、呆気ないほど簡単だった。
淡々と、滞りなく撮影は進み
その日最初のお客さんが入ってこられたときにはもう片付いていた。
前日のリベンジは果たせた、と思う。
いろんな点で注意が行き届いていて、“画”としても一番整っている。
しかし・・・端正ではあるが、伸びやかさが決定的に欠けていた。
落ち着きすぎてしまって、活き活きした空間との交歓が感じられない。
結局、最初に撮ったものを超えることはできなかった。
それはもちろん、私の未熟さによるところが大きいのだけれど、
“写真”というもの にとって、被写体との最初の出会いの瞬間が
それだけ重要だということでもあるのだろう。
今回はその瞬間を、画としてもベストの状態で写真にすることができなかった。
あるいは撮影回数を重ねることでその瞬間を超え、さらに深めていくところまで、
究めることができなかった。
まだまだ私の力が足りなかった。
そのことを、尾崎さんに対して申し訳なく思う。
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by immigrant-photo
| 2008-05-14 01:26
| 交流