2008年 01月 20日
『21g』 |

昨年末(12/30)に紹介した『マルホランド・ドライブ』を観たのは、
この映画を観てナオミ・ワッツの出演作をもう少し観てみたいと思ったからだった。
監督はアレハンドロ・イニャリトウ。
少々覚えにくい名前だが、昨年話題になった『バベル』の監督だといえば、
あぁ、と思い出される方も多いだろう。
『バベル』もそうだったが、この監督の作品は編集が非常に凝っていて、
時間や空間が入り乱れた構成になっているのが特徴である。
中でもこの『21g』はその傾向が顕著で画面の移り変わりが激しいので
話の流れを追うのが少し大変だったりする。
しかし、ストーリーはむしろ単純だ。
主な登場人物は3人。
それまで全く関係なくそれぞれに生きてきたその3人が、交通事故というできごとを通して
加害者・被害者の遺族・被害者からの心臓移植により生き長らえた者
という関係になる。
不幸な出来事により、ある日突然結び付けられたこの3人の元他者の関係を
容赦なく、しかし非常に丁寧に描いたのが本作である。
状況が状況だけに、それぞれが泣き、喚き、殴り、蹴り倒し、血まみれになり、そして・・・
非常に重くてしんどい映画だ。
しかし、それでもこれは救済の物語だと私は思う。
壮絶な救済の・・・
タイトルになっている “21g” というのは、人間のいのちの重さだという。
ある学者が測定したところ、人は死ぬと21g軽くなることがわかった。
つまりその21gがいのちの重さなのだ、という彼の説は、その後の研究で
何の根拠もないことが判明して今は否定されているのだそうだが、
映画のタイトルとしてはとても印象的だ。
いのちにまつわる重い重い内容に対して、
このあまりにささやかでありながら妙にリアルな数字をもってきたところに、
この監督のセンスと、人がいきるということに対する限りない敬意を感じる。
たかが21g、されど21g
大切にいきなければ、とあらためて思う。
by immigrant-photo
| 2008-01-20 02:20
| 映画