2022年 08月 09日
五色沼自然探勝路(3) |
振り返ってみて運がよかったと思うのは、
前夜、宿泊先ペンションで、
オリジナルのコースディナーを
いただきながらスタッフ(オーナー夫人?)
の方からいろいろお話を
聞けたことでした。
「熊…いるんですか?」
と尋ねた時の私は、地元の方の目には
至極のんきな観光客代表のように
見えたことでしょう。
「いますよ。います。」
と語り始められた数々の遭遇例。
特に3年ほど前、熊が頻繁に出没した年が
あったそうで、この近くのペンションに
泊まっていたお客さんが、犬の散歩中に
熊と遭遇、騒いだ犬が襲われて…とか
その後このペンション付近でも
親子熊が道を歩いていて…とか
人気スポット毘沙門沼のボート乗り場から
ほんの30メートルほどの場所で、
散策中の若い女性が出会い頭に顔を…とか。
語り口調が静かで淡々としている
だけに一層真実味が増して怖ろしい。
翌朝、私たちは予定通り中瀬沼に
向かいました。
ここは大駐車場やビジターセンター
などがあるメインの湖沼群から
少し離れてはいますが、
散策路や展望台はしっかり整備されています。
浮島の点在する広い沼の背後に
爆発でえぐられた裏磐梯が
荒々しい表情を見せて雄大かつ荘厳。
下調べ中にインスタの絶景写真を
たくさん見た娘が、今回一番
行きたがっていた場所でした。
チェックアウト時間までに戻るため、
元々の計画では早朝6時頃
出発する予定でしたが、
前夜、宿の方にそれを話したところ
「早朝はやめた方がいいです。
もっと人が通りそうな時間の方がいい。」
とおっしゃって、往きは散策路入口まで
オーナーが車に乗せて行って下さる
ことになりました。
時間に余裕ができたので、出発は7時。
土曜日なのでそろそろ他のハイカーも
いるかと思いましたが、結局
誰とも会わないまま、展望台に着きました。
(撮影:娘)
残念ながら磐梯山の山頂付近には
雲がかかっていてなかなか全貌が見えず、
水面も水草に覆われて木々の緑と
同化してしまい、インスタ写真で
想像していた青と緑の競演という
イメージとは少し違いましたが、
それでも見晴らし抜群の広大な風景に
暫し見惚れて、代わる代わる写真を
撮ったりしました。
一人ずつ交代で写真を撮ったのは、
その間もう一人が熊鈴を振るためです。
昨夜のようなお話をうかがってしまうと、
もはや、どこから熊が現れても
おかしくはないという気になる。
ひとしきり絶景を堪能した後、
まだ時間に余裕があったので、来た時とは
別のルートを辿り、少し回り道をして
車道の方に引き返すことにしました。
陽射しもかなり高くなってきて
ちらちら揺れる木漏れ日が美しい…
(撮影:娘)
娘に続いて私もカメラを構えたその時。
「何かいる!」
娘が声をあげたのと、
ドサッ…ザザザッ…と重量感のある音が、
背後の小高い藪の中でしたのと
ほぼ同時でした。
この辺りではキツネやタヌキも見られる
と聞きましたが、この音は
そんなサイズの動物がたてる音じゃない。
しかも娘は、ひと抱えほどの黒くて
丸っこいものが、木から下りてくるのを
見たというではないか…
熊、確定。
娘が見た通りなら子熊かもしれないけれど
ならば近くにお母さんも…
と考えるのも怖ろしく、とにかく
熊鈴をぶん回しながら、先程までいた
展望台に引き返し、開けた場所で、
周囲を警戒しながら、少し待つ
ことにしました。
幸いそれ以上のことは起こらず、
びくびくキョロキョロしながらも
元来た道を、無事に帰ってこられた
わけですが、本当に怖かった…
自然に分け入るのは、
こういう危険とも常に隣り合わせ
ということなのだと
改めて肝に命じさせられた
一件でした。
五色沼周辺は国立公園に指定されて
いるため規制が強く、
整備のための草刈りさえなかなか許可
されないほどだとか。
木も繁り放題。
だから年々、沼が見えにくくなっている
のだそうです。
(確かに、修学旅行のときはもっと
沼全体が見渡せたような気がします。)
自然探勝路も、敢えて整え過ぎない感じの
整備にとどめられている印象でした。
お陰で豊かな自然が保たれていますが、
その懐に入るからには、人間の側にも
それなりの心づもりが必要でしょう。
近ければ毎週でも訪れたいと思うほどの
とても素晴らしい場所でしたが、
行くなら、熊鈴必携です。
by immigrant-photo
| 2022-08-09 16:27
| wanderings