2021年 01月 17日
いま |
岸本佐知子「死ぬまでに行きたい海」(スイッチ・パブリッシング)読了。
なんといってもタイトルがまず、秀逸ではないですか。
岸本さんの過去のインタビューでの発言にあった
(ご本人さえ忘れていた)この言葉を、
連載タイトルとして提案したのは
出版社の方だったとか。
グッジョブですなぁ!
私はまだ2冊しか岸本さんの著書を
読んだことがないけれど、
飄々として可笑しみのある語り口ながら
突然暴走して、そのまま淡々と
見えないところまで走り去ってしまいそうな
独特の切迫感みたいなものも感じる。
「死ぬまでに」
なんて、私たちはあまり本気では言わない。
「いつか」をちょっと大袈裟に言ってみた(笑)
ぐらいの照れ隠しを含むのが普通だろう。
しかし岸本さんの「死ぬまでに」には
この人ガチだ…と思わせる迫力がある。
岸本さんがユーモラスに描かれる、
思わずくすっと笑ってしまうような情景にさえ
死や、失われてしまったもの・ひと・とき
の気配を強く感じるからだろうか。
それはこの本に掲載されている写真も同様だ。
岸本さんご自身が、あまり性能のよくない
スマホカメラで撮られたというそれらは
一見間が抜けたような親しさを纏いつつ
どこかゾクリとするようなものを孕んでいて
ちょっと怖い。
けど、そこに惹かれる。
というわけで、大変おもしろく読み終えたのですが
猛烈に、ふらふら出歩きたくなるという
困った副作用アリ。
要注意です。
by immigrant-photo
| 2021-01-17 16:27
| 本