2020年 01月 03日
シネマ歌舞伎「廓文章 吉田屋」 |
昨年11月、近くの映画館でシネマ歌舞伎という
シリーズが上映されているのを知った。
月イチで演目が変わり、2,100円で歌舞伎の
映像が観られる。
11月はかの近松門左衛門の名作「女殺油地獄」だった。
舞台を映像化するのは難しいのでは…と思いつつ
ものは試しと観てみたら、
これがもう、すごくおもしろくて。
初めのうちこそ、舞台を画面で見る違和感を
感じはしたものの、いつの間にかすっかり
舞台に引き込まれてしまって、
江戸時代の与太者の残忍な殺人事件をめぐるドラマに
時空を超えて胸打たれ、涙したのだった。
ちゃんと芝居の内容に即した撮り方がされているので
スクリーンとはいえ、大変臨場感があり
舞台を観たのと同じぐらい見応えがある。
すっかり気に入って、貰ってきたチラシを見ると
1月は仁左衛門・玉三郎の「廓文章 吉田屋」。
廓を舞台に繰り広げられる、他愛もない
しかし何とも豪華絢爛な痴話喧嘩は
いかにもお正月らしい演目なので、
すぐに友だちにも声をかけ、上映を心待ちにしていた。
いや〜、想像以上にゴージャスでしたわ。
仁左衛門の伊左衛門はホントはまり役。
情けなくて馬鹿馬鹿しいことばかり言うくせに
妙に愛嬌と可愛げのあるこの男は
落ちぶれてなお、大店の若旦那らしい品と
はんなりとした色気を纏ってあくまで美しく。
これでは、夕霧ならずとも惚れてしまうであろう
本当に困ったヤツなのだ。
玉三郎演じる夕霧も秀逸。
遊郭の最高位に君臨する太夫に相応しい
格別の存在感と近寄りがたさを感じさせる一方で、
チラッと送る視線に、好きな男のつまらぬヤキモチに
本気で心を傷める女のいじらしさと
それ故なおの色目遣いをこめて魅せる。
大した筋はなく、最後にいきなり大金が届いて
夕霧は伊左衛門に身請けされることになりましたとさ
めでたしめでたし…という唐突な大団円も
なかなかぶっ飛んでいていっそ清々しく
まぁ、お正月だからいいんじゃない?
という気にさせてくれる。
華々しく、めでたく年始を飾りたい方は
ぜひ、お近くの上映館へ。
シネマ歌舞伎、オススメです。
by immigrant-photo
| 2020-01-03 19:42
| 映画