2016年 05月 02日
本日はリベンジ |
というわけで、先週見損なった「望月計男とどうぶつたち。」
を見るために、再び鵜の木を訪れたのである。
が、思ったより早く着いたし、駅前商店街のお店に
一度入ってみたかったので、「関西風」と書かれたうどん屋に入った。
常連さんぽい先客が一人、店の奥に陣取っている。
何となく、カウンター席を選んで、メニューをめくる。
種類が多くて迷ったが、白魚とじうどんというのにしてみた。
ふと気がつけば、店内にずっと流れているのは童謡だ。
かえるのうたが〜♪ とか おはながわらった (^-^) とか
ツッピンツッピンとびうおツッピン♫ とか。
そんなゆる〜い空気の中で、完食。
いよいよギャラリーへと向かう。
ここまでの前置きの長さは期待の大きさに比例する、と
受け止めていただきたい。
ここまで来てなお、あっさり行ってしまうのが、
なんだかもったいない気がしてぐずぐずしていたというか。
ぎい、と鳴る木のドアを押して入ってみれば
予想以上につつましい感じのする空間である。
受付で料金400円を払い、作品保護のための
(額装していない作品も多いので)マスクを受け取る。
一歩、展示室に足を踏み入れたところで早くも次の来客があり
混むかと思ったが、その後の在廊者は平均して3〜4人程度で
広くはないスペースでも、ゆったりした気分で見ることができた。
壁には、動物の版画がびっしりと貼られているが
不思議に、息苦しさは感じない。
モノクロもカラーもあるそれらの作品の大半は銅版画だ。
ざっくりしていながら繊細で、かなり図案化されているのにリアルで、
愛敬とユーモアを感じさせつつ哲学的。
これらの動物シリーズで、無名だった望月計男が
初めて脚光を浴びたのは、2013年。
やはりこの Hasu no hana を会場として開催された
個展がきっかけだった。
望月計男78歳の時である。
その後も創作意欲は衰えることなく、新たな世界の展開を目指して
小口木版にも取り組み始めていた彼は、ついに会心の一作を仕上げ、
それを版木の材料の提供者に見せるために
作品を携えて山梨に赴いたが、面会を明日に控えて急逝した。
今回の回顧展には、遺作となった小口木版の作品も展示されている。
銅版画では彫った線が黒く現れるが、木版は逆に、
黒の面に白く、作家の仕事の跡が刻まれる。
輪切りになった木の切り口をそのまま活かした黒い面にクマがいる。
その背後には深い森が広がっている。
暗い、夜の森。
けれど彼方から差す明るい月明かりが感じられ、
クマはその明かりに誘われてゆくようだ。
材料の木を譲ってもらってから10年の試行錯誤を経て漸く、
の自信作だけあって、大変完成度の高い作品である。
むしろ出来上がり過ぎているかもしれない。
「この完成型から、望月さんがどう崩していくのか、を
見てみたかったですねぇ…本当に」
と語ってくださったオーナーは、若いけれどしっかりしていて
思慮深く、しかも実に自然体な感じが心地よい素敵な方だった。
望月計男という稀有なアーティストを見出したのが
この人だったのは幸い、と思う。
しなやかで頼もしい守り人とともに在って
すっかり安心してのびのびと息づいている様子の作品たち。
この何とも心地よい空間に身をおくことができるのも
いよいよ来たる5月6日までとなった。
居心地よすぎて、帰るのに踏ん切りが必要になるほどなので
時間と心にゆとりを持っての訪問をおすすめします。
【追記】
以下のインタビュー記事を読むと、ますます行きたくなるはず。
謎の爺とふしぎな「どうぶつたち」
を見るために、再び鵜の木を訪れたのである。
が、思ったより早く着いたし、駅前商店街のお店に
一度入ってみたかったので、「関西風」と書かれたうどん屋に入った。
常連さんぽい先客が一人、店の奥に陣取っている。
何となく、カウンター席を選んで、メニューをめくる。
種類が多くて迷ったが、白魚とじうどんというのにしてみた。
ふと気がつけば、店内にずっと流れているのは童謡だ。
かえるのうたが〜♪ とか おはながわらった (^-^) とか
ツッピンツッピンとびうおツッピン♫ とか。
そんなゆる〜い空気の中で、完食。
いよいよギャラリーへと向かう。
ここまでの前置きの長さは期待の大きさに比例する、と
受け止めていただきたい。
ここまで来てなお、あっさり行ってしまうのが、
なんだかもったいない気がしてぐずぐずしていたというか。
ぎい、と鳴る木のドアを押して入ってみれば
予想以上につつましい感じのする空間である。
受付で料金400円を払い、作品保護のための
(額装していない作品も多いので)マスクを受け取る。
一歩、展示室に足を踏み入れたところで早くも次の来客があり
混むかと思ったが、その後の在廊者は平均して3〜4人程度で
広くはないスペースでも、ゆったりした気分で見ることができた。
壁には、動物の版画がびっしりと貼られているが
不思議に、息苦しさは感じない。
モノクロもカラーもあるそれらの作品の大半は銅版画だ。
ざっくりしていながら繊細で、かなり図案化されているのにリアルで、
愛敬とユーモアを感じさせつつ哲学的。
これらの動物シリーズで、無名だった望月計男が
初めて脚光を浴びたのは、2013年。
やはりこの Hasu no hana を会場として開催された
個展がきっかけだった。
望月計男78歳の時である。
その後も創作意欲は衰えることなく、新たな世界の展開を目指して
小口木版にも取り組み始めていた彼は、ついに会心の一作を仕上げ、
それを版木の材料の提供者に見せるために
作品を携えて山梨に赴いたが、面会を明日に控えて急逝した。
今回の回顧展には、遺作となった小口木版の作品も展示されている。
銅版画では彫った線が黒く現れるが、木版は逆に、
黒の面に白く、作家の仕事の跡が刻まれる。
輪切りになった木の切り口をそのまま活かした黒い面にクマがいる。
その背後には深い森が広がっている。
暗い、夜の森。
けれど彼方から差す明るい月明かりが感じられ、
クマはその明かりに誘われてゆくようだ。
材料の木を譲ってもらってから10年の試行錯誤を経て漸く、
の自信作だけあって、大変完成度の高い作品である。
むしろ出来上がり過ぎているかもしれない。
「この完成型から、望月さんがどう崩していくのか、を
見てみたかったですねぇ…本当に」
と語ってくださったオーナーは、若いけれどしっかりしていて
思慮深く、しかも実に自然体な感じが心地よい素敵な方だった。
望月計男という稀有なアーティストを見出したのが
この人だったのは幸い、と思う。
しなやかで頼もしい守り人とともに在って
すっかり安心してのびのびと息づいている様子の作品たち。
この何とも心地よい空間に身をおくことができるのも
いよいよ来たる5月6日までとなった。
居心地よすぎて、帰るのに踏ん切りが必要になるほどなので
時間と心にゆとりを持っての訪問をおすすめします。
【追記】
以下のインタビュー記事を読むと、ますます行きたくなるはず。
謎の爺とふしぎな「どうぶつたち」
by immigrant-photo
| 2016-05-02 23:18
| 美術展