2015年 12月 19日
往生際 |
数日前、庭で、ボロボロになったオオカマキリを見つけた。
つい、最期を看取ってやりたいような気になり
そのままずっと見ていたが、その日は死にきれずに夕方を迎えた。
翌朝、カマキリは昨日と少し違った場所で動かなくなっていた。
夜の間に死んだのだな…合掌するような気持ちでしばらく見ていた。
カマキリは動かなかった。
洗濯干しを終えて、何となくまたカマキリを見に行った。
よい天気で、南側にある庭いっぱいに日が射していた。
動かなくなったカマキリも明るく照らされていた。
もう少しよく見たくて顔を近づけると、
突然、死んだと思っていたカマキリがぐっと頭を擡げた。
さらには、軽々と鎌を動かしてみせる。
勝手に殺されてたまるか、と言わんばかりである。
まだ、生きていた。
失礼しましたと恐縮する私を横目で見ながら
鎌の手入れなどする姿には、余裕さえ感じられる。
すごい…
その生命力に、こちらはただただ感じ入るばかり。
看取ってやろうなどという恩着せがましい思いは
いつの間にか消えていた。
また次の朝を迎えた。
カマキリは葉の陰に顔を隠すようにしている。
乾いた脚は力なく宙に浮き、
破れた羽の緑もすっかりくすんで生気を失っている。
今度こそ死んでしまったに違いない。
それにしても本当によく頑張った…
そう思いながら、なおも見ているとまた
カマキリが頭を動かした。
続いて頭上に前脚を伸ばし、ツタの茎につかまって
体を起こそうとする。
まだ、生きていた。
そして今朝。
昨日の夕方いたところに、カマキリの姿はなかった。
夜の間に死んで、下の茂みに落ちてしまったのかもしれない。
少し探してみたが、見つからなかった。
ひとり取り残された気分のまま、しゃがんでいたら
いた!
大きく張り出した掃き出し窓の窓枠のすぐ下に、ひっそりと。
初め、力なく引っかかっている死骸のようにみえたそれは
しかしまだ時々、思い出したように頭を振り、
触覚や脚を動かすのだった。
少しずつ確実に死に近付きながら、しかしなお懸命に生きている。
いきものは、死ぬまでは生きている。
という当たり前のことの凄まじさと尊さとを
この往生際のカマキリは教えてくれた。

つい、最期を看取ってやりたいような気になり
そのままずっと見ていたが、その日は死にきれずに夕方を迎えた。
翌朝、カマキリは昨日と少し違った場所で動かなくなっていた。
夜の間に死んだのだな…合掌するような気持ちでしばらく見ていた。
カマキリは動かなかった。
洗濯干しを終えて、何となくまたカマキリを見に行った。
よい天気で、南側にある庭いっぱいに日が射していた。
動かなくなったカマキリも明るく照らされていた。
もう少しよく見たくて顔を近づけると、
突然、死んだと思っていたカマキリがぐっと頭を擡げた。
さらには、軽々と鎌を動かしてみせる。
勝手に殺されてたまるか、と言わんばかりである。
まだ、生きていた。
失礼しましたと恐縮する私を横目で見ながら
鎌の手入れなどする姿には、余裕さえ感じられる。
すごい…
その生命力に、こちらはただただ感じ入るばかり。
看取ってやろうなどという恩着せがましい思いは
いつの間にか消えていた。
また次の朝を迎えた。
カマキリは葉の陰に顔を隠すようにしている。
乾いた脚は力なく宙に浮き、
破れた羽の緑もすっかりくすんで生気を失っている。
今度こそ死んでしまったに違いない。
それにしても本当によく頑張った…
そう思いながら、なおも見ているとまた
カマキリが頭を動かした。
続いて頭上に前脚を伸ばし、ツタの茎につかまって
体を起こそうとする。
まだ、生きていた。
そして今朝。
昨日の夕方いたところに、カマキリの姿はなかった。
夜の間に死んで、下の茂みに落ちてしまったのかもしれない。
少し探してみたが、見つからなかった。
ひとり取り残された気分のまま、しゃがんでいたら
いた!
大きく張り出した掃き出し窓の窓枠のすぐ下に、ひっそりと。
初め、力なく引っかかっている死骸のようにみえたそれは
しかしまだ時々、思い出したように頭を振り、
触覚や脚を動かすのだった。
少しずつ確実に死に近付きながら、しかしなお懸命に生きている。
いきものは、死ぬまでは生きている。
という当たり前のことの凄まじさと尊さとを
この往生際のカマキリは教えてくれた。

by immigrant-photo
| 2015-12-19 13:13
| thinking