六田知弘 写真展 「壁」
午後3時過ぎ。ちょうどハロウィンということで、ナースやら血まみれの人やら、ごくフツーにカボチャやら・・・の若者がうろうろし始めた渋谷を後にして五反田に向かい、そこから東武池上線で洗足池へ。駅前商店街のアーケードからほど近いギャラリー古今で開催中の
この展示が、この日の本命だった。白くてすっきりしたギャラリーの壁にかかっているのは、「壁」。六田さんが十数年に渡って世界各地で撮りためてこられた様々な壁の写真が古美術とともに飾られて、ゆったりと流れる刻を感じさせる。
ざらざらと指先がひっかかりそうな石の壁日にあたためられたテラコッタすべすべしたしっくい落書きを消すために塗り重ねられたペンキの厚み壁に穿たれた穴の凸凹した輪郭
六田さんの写真の質感があまりに豊かなので、実際に手で触れてみたくなって困った。
横から見てみたり、下から見上げたりしてみても実際には完全に平面なのだが、どうしても自分の目が信じられない。
触ってみたい・・・どうやらそれは時に六田さんご本人さえ抱かれる欲求であるらしくそれぞれの写真についてのエピソードなどお話し下さりながら時折、つい・・という感じで「壁」に手を伸ばされるのが印象的だった。
たくさんの「壁」の中に、「床」の写真が3枚ある。これは六田さんがほれこんで撮影された、南製作所の床だ。しずかな光の底に、南製作所が重ねた歳月が層を成している。清澄でありながら、金属の重みやしみ込んだ油の匂いまで感じられるようなとてもうつくしい写真だった。
毎週金・土・日の3日間の午後のみ開廊するギャラリーなので日程的には少々無理をする感じで出かけたのだが、
見に行けて本当によかった。
「壁」としずかに向き合う贅沢を存分に味わってみたい方は、ぜひ。