2013年 06月 09日
極めて私的な音楽鑑賞ノート |
ウラディーミル・ホロヴィッツ

これまでクラッシック音楽をほとんど聴かないままきてしまった私だが
ホロヴィッツの名前は知っていた。
1983年、この高名な老ピアニストの初来日公演が
テレビのニュースでもとりあげられたのだが、
休憩時間のロビーでマイクを向けられた音楽評論家は
「骨董としてもヒビ入ったなぁ・・・」
とバッサリ切り捨てるがごとき酷評。
言葉そのものがあまりに強烈だったため、
ただニュースを見ていただけの私にも大変なインパクトがあり
“ヒビの入った骨董”という言葉は
ホロヴィッツの名とともにザックリと私の心に刻まれた。
以来、きちんと演奏を聞いてみる機会もないまま
ホロヴィッツといえば、あの気の毒なおじいちゃん
みたいなイメージをもって、30年が経っていた。
そして、この春。
娘がピアノ発表会でショパンの作品10–3「別れの曲」を弾くことになり
参考にするためのCDをアマゾンで探すことにした。
最近のアマゾンは、試聴できるものも多いので
いろんなピアニストのCDを聴き比べて選べるのがありがたい。
とはいえ、ノートパソコンのスピーカーだから当然音質は悪く、
ショパンの曲のように耳に心地よい旋律だと余計に
あぁ、あの曲ね、はいはい・・・
みたいな感じになってしまって、何もひっかからない。
この人の演奏をぜひ聴いてみたい、というほどの気持ちになかなかならない。
どのピアニストの演奏でも美しく聴こえるので、
決め手に欠け、却って選びにくくなってしまったのだ。
が、そんな中でもホロヴィッツの演奏は明らかにユニークだった。
私たち日本人は特に「別れの曲」という呼称のイメージにひっぱられて
感傷的に、思い入れたっぷりに弾きたくなってしまうこの曲だが
ホロヴィッツの演奏はまず、速い速いっ!
容赦なく、がんがんいくのだ。
ついていくのに必死で、しんみりと感傷に耽る余地は全くない。
これがあの「別れの曲」???
と、びっくりし、とりあえずちゃんと聴いてみたくなった。
CDを聴いてみて、その独特さにあらためて驚いた。
超絶技巧を駆使し、信じ難いスピードで
すさまじいまでの爆音から、消え入りそうな最弱音まで
変幻自在に駆け回る音は
とてもピアノの鍵盤から出る音とは思えなかった、
もっと生々しくて、それ自体の意志が感じられるような
そう、音というよりは“声”。
ホロヴィッツが奏でる音は
ピアノといういきものが発する声のように感じられた、
こんなピアノは初めて聴いた。
ただひたすら圧倒され、揺さぶられて
1枚聴き終えた時にはちょっとクラクラしたほど。
なかなか新鮮な体験だった。
あまりに個性的なので、好き嫌いがはっきり分かれると思うが
私はこの人のピアノの、鍵盤を感じさせないところ
いきもののような強靭さと危うさのあるところに魅かれた。
これから、もっといろいろ聴いてみたい。

これまでクラッシック音楽をほとんど聴かないままきてしまった私だが
ホロヴィッツの名前は知っていた。
1983年、この高名な老ピアニストの初来日公演が
テレビのニュースでもとりあげられたのだが、
休憩時間のロビーでマイクを向けられた音楽評論家は
「骨董としてもヒビ入ったなぁ・・・」
とバッサリ切り捨てるがごとき酷評。
言葉そのものがあまりに強烈だったため、
ただニュースを見ていただけの私にも大変なインパクトがあり
“ヒビの入った骨董”という言葉は
ホロヴィッツの名とともにザックリと私の心に刻まれた。
以来、きちんと演奏を聞いてみる機会もないまま
ホロヴィッツといえば、あの気の毒なおじいちゃん
みたいなイメージをもって、30年が経っていた。
そして、この春。
娘がピアノ発表会でショパンの作品10–3「別れの曲」を弾くことになり
参考にするためのCDをアマゾンで探すことにした。
最近のアマゾンは、試聴できるものも多いので
いろんなピアニストのCDを聴き比べて選べるのがありがたい。
とはいえ、ノートパソコンのスピーカーだから当然音質は悪く、
ショパンの曲のように耳に心地よい旋律だと余計に
あぁ、あの曲ね、はいはい・・・
みたいな感じになってしまって、何もひっかからない。
この人の演奏をぜひ聴いてみたい、というほどの気持ちになかなかならない。
どのピアニストの演奏でも美しく聴こえるので、
決め手に欠け、却って選びにくくなってしまったのだ。
が、そんな中でもホロヴィッツの演奏は明らかにユニークだった。
私たち日本人は特に「別れの曲」という呼称のイメージにひっぱられて
感傷的に、思い入れたっぷりに弾きたくなってしまうこの曲だが
ホロヴィッツの演奏はまず、速い速いっ!
容赦なく、がんがんいくのだ。
ついていくのに必死で、しんみりと感傷に耽る余地は全くない。
これがあの「別れの曲」???
と、びっくりし、とりあえずちゃんと聴いてみたくなった。
CDを聴いてみて、その独特さにあらためて驚いた。
超絶技巧を駆使し、信じ難いスピードで
すさまじいまでの爆音から、消え入りそうな最弱音まで
変幻自在に駆け回る音は
とてもピアノの鍵盤から出る音とは思えなかった、
もっと生々しくて、それ自体の意志が感じられるような
そう、音というよりは“声”。
ホロヴィッツが奏でる音は
ピアノといういきものが発する声のように感じられた、
こんなピアノは初めて聴いた。
ただひたすら圧倒され、揺さぶられて
1枚聴き終えた時にはちょっとクラクラしたほど。
なかなか新鮮な体験だった。
あまりに個性的なので、好き嫌いがはっきり分かれると思うが
私はこの人のピアノの、鍵盤を感じさせないところ
いきもののような強靭さと危うさのあるところに魅かれた。
これから、もっといろいろ聴いてみたい。
by immigrant-photo
| 2013-06-09 23:49
| wanderings