2011年 04月 29日
『英国王のスピーチ』 (公開中) |
今日はいよいよ、英王室ロイヤル・ウェディング当日。
日本時間の午後7時から行われるウィリアム王子とケイト・ミドルトンさんの挙式の模様は
世界中に中継され、約20億人がテレビで見守ると予想されているそうだ。
英王室つながりで、つい先日観てきた本作のことを。
人前で話すのがとても苦手だ。
だから、この映画の主人公である英国王ジョージ6世の憂鬱を思うと心が痛くなる。
画面いっぱいに大写しになった彼の顔が苦しげにゆがみ、
舌がもつれて口の中でのたうつのを見るたびに、
空気が固まったかのように重苦しい沈黙が続くたびに、
こちらまで苦しくなってくる。
コリン・ファースの迫真の演技に
引き込まれるというよりは、巻き込まれてしまった。
それにしてもこの人は、こういう、クソ真面目で何となくイケてない男を
最高にチャーミングに演じられる人だなぁ・・・
しかもどことなく品があるので、今回のような役はまさにハマリ役。
まずは彼あっての映画だと、強く感じた。
しかし、その英国王の吃音治療をすることになった言語療法士ライオネル・ローグ役の
ジェフリー・ラッシュの演技がまた、とてもすばらしかった。
彼は、まず治療者と患者とが対等の立場で接することを求め、
心理面からのアプローチを重視するが、
その極めてユニークな治療方法が、実は全て実践を通して身につけたものである
ということが、物語も佳境にさしかかったところで判明する。
つまり彼はドクターとしての資格を持った専門家ではなく、
どちらかというと冴えない人生を送ってきた一平民に過ぎないのだった。
英国からすれば植民地のオーストラリア出身ということでともすれば低く見られ、
大好きな演劇で一花咲かせる夢を諦めきれないまま、年を重ねてきた彼。
しかし彼の吃音治療における治療方針は常に一貫していて、
それは患者が例え英王室の一員であっても全く揺らがないのだ。
ジェフリー・ラッシュは、この人物の経歴をきけば多くのひとが抱いてしまうような
一抹のうさんくささもしっかり漂わせつつ、
しかしそれ以上に、資格などという他人からの保証に頼ることなく
独力で道を開いてきた男の自信と矜持を力強く演じきっている。
英国王ジョージ6世を支えたのは、言語療法士の肩書きではない。
ライオネル・ローグという男の揺るぎなさと情熱、信念が
王族であることのプレッシャーや吃音コンプレックスから
小さく縮こまり固く閉ざされてしまっていた国王の心を少しずつ開き、
口元をやさしくほぐして、言葉を導くのだ。
さらに・・・
苦悩する夫君のために奔走する妻エリザベスの内助の功も忘れてはいけない。
王族ではなく、王室に嫁いだ彼女ならではの柔軟な考え方と行動力が
ジョージ6世をローグに引き合わせ、その後の国王の変化を促したのだから。
ヘレナ・ボナム=カーターは目立たないながらも陰でしっかりと夫を支える妻の
芯の強さと深い愛情を好演。
最近は、特殊メイクをするようなエキセントリックな役が多かっただけに
(それはそれで彼女らしく、見応えもあるのだけれど)
久々にがっつり演技力での真っ向勝負が観られたのはうれしかった。
本当なら3月半ばに観にいくつもりでいたが、震災で叶わず今になった。
実力派の俳優陣を揃え、史実に基づくストーリーを丁寧に、手堅くまとめた
いかにもイギリス映画らしい佳作。
再び映画館で映画を観られるまでに日常が戻ったことに感謝しつつ観るに相応しい
落ち着きと安定感のある1本だった。
日本時間の午後7時から行われるウィリアム王子とケイト・ミドルトンさんの挙式の模様は
世界中に中継され、約20億人がテレビで見守ると予想されているそうだ。
英王室つながりで、つい先日観てきた本作のことを。
人前で話すのがとても苦手だ。
だから、この映画の主人公である英国王ジョージ6世の憂鬱を思うと心が痛くなる。
画面いっぱいに大写しになった彼の顔が苦しげにゆがみ、
舌がもつれて口の中でのたうつのを見るたびに、
空気が固まったかのように重苦しい沈黙が続くたびに、
こちらまで苦しくなってくる。
コリン・ファースの迫真の演技に
引き込まれるというよりは、巻き込まれてしまった。
それにしてもこの人は、こういう、クソ真面目で何となくイケてない男を
最高にチャーミングに演じられる人だなぁ・・・
しかもどことなく品があるので、今回のような役はまさにハマリ役。
まずは彼あっての映画だと、強く感じた。
しかし、その英国王の吃音治療をすることになった言語療法士ライオネル・ローグ役の
ジェフリー・ラッシュの演技がまた、とてもすばらしかった。
彼は、まず治療者と患者とが対等の立場で接することを求め、
心理面からのアプローチを重視するが、
その極めてユニークな治療方法が、実は全て実践を通して身につけたものである
ということが、物語も佳境にさしかかったところで判明する。
つまり彼はドクターとしての資格を持った専門家ではなく、
どちらかというと冴えない人生を送ってきた一平民に過ぎないのだった。
英国からすれば植民地のオーストラリア出身ということでともすれば低く見られ、
大好きな演劇で一花咲かせる夢を諦めきれないまま、年を重ねてきた彼。
しかし彼の吃音治療における治療方針は常に一貫していて、
それは患者が例え英王室の一員であっても全く揺らがないのだ。
ジェフリー・ラッシュは、この人物の経歴をきけば多くのひとが抱いてしまうような
一抹のうさんくささもしっかり漂わせつつ、
しかしそれ以上に、資格などという他人からの保証に頼ることなく
独力で道を開いてきた男の自信と矜持を力強く演じきっている。
英国王ジョージ6世を支えたのは、言語療法士の肩書きではない。
ライオネル・ローグという男の揺るぎなさと情熱、信念が
王族であることのプレッシャーや吃音コンプレックスから
小さく縮こまり固く閉ざされてしまっていた国王の心を少しずつ開き、
口元をやさしくほぐして、言葉を導くのだ。
さらに・・・
苦悩する夫君のために奔走する妻エリザベスの内助の功も忘れてはいけない。
王族ではなく、王室に嫁いだ彼女ならではの柔軟な考え方と行動力が
ジョージ6世をローグに引き合わせ、その後の国王の変化を促したのだから。
ヘレナ・ボナム=カーターは目立たないながらも陰でしっかりと夫を支える妻の
芯の強さと深い愛情を好演。
最近は、特殊メイクをするようなエキセントリックな役が多かっただけに
(それはそれで彼女らしく、見応えもあるのだけれど)
久々にがっつり演技力での真っ向勝負が観られたのはうれしかった。
本当なら3月半ばに観にいくつもりでいたが、震災で叶わず今になった。
実力派の俳優陣を揃え、史実に基づくストーリーを丁寧に、手堅くまとめた
いかにもイギリス映画らしい佳作。
再び映画館で映画を観られるまでに日常が戻ったことに感謝しつつ観るに相応しい
落ち着きと安定感のある1本だった。
by immigrant-photo
| 2011-04-29 10:30
| 映画