2009年 04月 10日
< テオ・ヤンセン展 ― 新しい命の形 ― > |
1月17日(土)~4月12日(日)
日比谷パティオ特設会場
もう随分前に、テレビで紹介されていたのをたまたま見て、
絶対見に行こう!と思っていたのだが、会期終了も間際になった昨日漸く行くことができた。
元々物理学者だったヤンセンは、1975年に研究生活をやめて画家となったが、
やがて新しい形で命を創造し、その進化を目の当たりにしたいという欲求にかられる。
コンピュータの中で生まれた新しい命(前グルトン期)は、
1990年、ついにたんぱく質の代わりにプラスティックチューブで構成された
実体を持つに至り(グルトン期)、ここに「ビーチ・アニマル」という新しい生命体が誕生した。
一つ一つの材料を見ると、本当にどこのホームセンターでも売っているような、
ありふれたプラスティックチューブや結束コード、粘着テープである。
なのに、この生々しさにちょっとぞくぞくしてしまう。
(ただしビーチ・アニマルが結束コードを持ち始めるのは、次のコルダ期以降)
体を得た新生命体は、その後、コルダ期(1991-1993)、カリダム期(1993-1994)、
タピディーム期(1994-1997)と、その時々の課題を克服しつつ進化をとげていった。
その進化の過程では、創造主ヤンセンの浮気(!)によって
木材の体を得た(リグナタム期 1997-2001)こともある。
が、ヴァポラム期(2001-2006)に再びプラスティックチューブに戻った彼らは、
動かされる存在から自ら動く存在へという、新たな方向に進化していく。
蠕動するビースト。背中が波打つような動きをする。
そして脳の時代であるセレブラム期(2006-現在)を迎え、
ビーチ・アニマルたちは、ますます自立した生命体へと進化し続けている。
2年間生きた。
・・・・・・というように、これは何とも壮大な歴史的物語をもった展示だった。
妄想、というにはあまりにも平和なヤンセンの試み。
こんなこと(褒め言葉です)に大変な時間と労力とを費やしている人がこの地球上にいる
と思うだけで、何だか救われた気になってしまうではないか。
ちょっと残念だったのは、作品の裏の物語が大きすぎて、
それほど広くはない会場内にはとても収まりきっていない感がなきにしもあらず、
であった点だ。
唯一実際に動かしてみることのできたアニマリス・オルディス(BMWのCMに登場)が、
ちょっとご機嫌斜めであるように感じられたのは、そのせいかもしれない。
日の光が差し、風が渡る屋外で自由に動き回るアニマルたちを、いつの日か見てみたい。
その時、彼らはどんな形になって何をしているだろう・・・
by immigrant-photo
| 2009-04-10 08:25
| 美術展